20110519日本総合研究所が「大震災の雇用への影響と対応策-45~65万人失職リスクへの対策パッケージ-」として、東日本大震災以降の雇用状況の見込みと、失業対策に関する提言としたレポートを公表しました。

要約は以下の通り。

1.現況
巨大地震に大津波を併発した東日本大震災により、被災地では広範囲に産業基盤が毀損され、約14~20万人の職が失われた可能性
また、サプライチェーンの中断で12~25万人の雇用調整圧力が発生する恐れ
さらに来年以降も夏場の電力不足への懸念が強く残る場合、18万人の雇用が失われる恐れ
以上の合計で失職者は45~65万人に上り、原発風評被害や波及的影響を含めればこれを上回る可能性も。

2.被災地復興
①環境保全・高齢化などの課題解決のための産業創出を目指し、資源を集中的に投下して先端モデル地域を創出する一方、
②地場産業・既存コミュニティーをベースにしつつ必要に応じて再編・集約した「コンパクトで自立的な産業・生活圏」を形成するといった2つを軸として進めるべき。

3.中長期的な雇用への影響
原発事故の発生により、関東を中心とした東日本のみならず中部地方にまで、電力供給の不確実性が広がっていることのインパクトを無視できない。
電力制約が中長期にわたって持続することになれば、現状のエネルギー需要構造を前提とする限り、産業基盤が大きく毀損され雇用に悪影響が及ぶ恐れ。
エネルギー供給制約のもとで経済成長を持続するための新たな成長戦略を策定し、それに必要な労働移動を進めるための新たな人材育成システムの構築することが課題となろう。
(以上、レポートより)

レポートでは、最大失業者が45~65万人にまで拡大する可能性があるとされており、対処療法ではなく中長期的な施策が必要としています。

5月13日に法案成立した「求職者支援法」では、職業訓練中の失業者に月10万円の生活費を支給するとしていますが、失業救済のカギとなるようには思えません。

現在すでに制度化されている、既卒者トライアル雇用などを企業がもっと利用しやすいような仕組みとする方が、雇用促進につながるといえます。
例えば、ハローワークからの紹介応募を前提とするのではなく、実際に雇用した人材の状況に応じて奨励金を支給するなど、企業の採用事情にマッチしたものにしない限り、積極的な利用には結びつかないでしょう。

国の施策をもっと柔軟なものとし、中小企業が雇用促進をしやすい制度としてもらいたいものです。


大震災の雇用への影響と対応策-45~65万人失職リスクへの対策パッケージ-(日本総合研究所)
http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2011/110517/jri_110517.pdf

既卒者トライアル雇用奨励金
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/dl/c-top-b.pdf