人事・労務の知恵袋

人事・労務 パワーハラスメント防止義務化へ

【執筆者】社会保険労務士法人スマイング コンサルティンググループ マネージャー 薄田 順矢

政府は2019年3月8日、パワハラの防止措置を労働施策総合推進法などの改正案に盛り込み、閣議決定しました。今の通常国会で成立すれば、来春には相談窓口などを設ける必要があります。

パワハラを上司などの優越的な関係を背景に、業務上必要な範囲を超えた言動で働く環境を害することと明記し、企業には相談窓口やパワハラをした社員の処分内容を就業規則に設けるよう義務づけ、相談した人のプライバシーの保護なども必要になる見込みです。

法律で対策が義務となるパワハラについて具体的には、厚生労働省は法律の成立後につくる指針で示す予定だが、ベースになるのが、同省がまとめたパワハラを巡る6つの行為類型(身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害)になります。

判断が難しいのは業務の過大要求、業務の過小要求、個の侵害という3つになりますが、裁判で認定されたものには、先輩が他の従業員の仕事を後輩に押しつけ、徹夜で仕事をさせた事例や、過小業務は、接触事故を起こしたバス運転手に、営業所長が真夏に期限を示さず除草作業を命じたという例があります。

経済団体など企業側はパワハラの概念が広くなると上司が萎縮し、指導ができなくなるとして審議会などで厚労省に慎重な対応を求めてきたが、裁判ではパワハラをした従業員だけでなく、企業も訴えられて問題を放置した責任を問われたケースも少なくないです。

2017年度の労働局への相談では「いじめ・嫌がらせ」に関するものが7万2000件を超え、どの企業にとっても対応は急務です。

厚労省によると、既に相談窓口を設置している企業は7割を超えますが、ただ設置するだけにでは、未然の防止への実効性が低くなります。

以下、大手を中心により積極的にパワハラを未然に防ごうという機運は高まっています。
「カルソニックカンセイ」世界規模でコンプライナンス担当部署の組織、各職場でハラスメント問題の解決方法をだした優秀者を表彰
「電通」家族からの相談も受け付けるファミリーラインを設定
「鹿島建設」支店ごとにプログラムを作成して研修
「三菱重工業」新任の管理職と新入社員を対象に啓発研修を毎年実施、教材をグループ全体に配布
「サントリーホールディングス」6月末までに全社員を対象にeラーニングを実施予定
「ビズリーチ」人事に連絡しやすい社内ビジネスチャットを導入、希望に応じて面談も

パワハラは、社員の人材流出や仕事への意欲低下にもつながります。
企業としても、パワハラの事案が実際に発生した場合、使用者責任が問われるため、ハラスメント研修のお問い合わせが増えています。

研修プログラム>ハラスメント
https://www.nari-sr.net/business/training/harassment

弊社監修「職場のハラスメント標準問題集」
http://www.e-coms.co.jp/service/harassment/

投稿日:2019/03/11
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